開催概要 インフラ建設現場においては、道路や橋梁の新設もさることながら、既存の建造物を補修・修繕することで長寿命化する必要性が高まっています。...
【Hatsuly導入事例】現場次第では既に10点満点のシステム!断面修復工における出来形管理をHatsulyで大幅省力化!精度面も問題なく活用可能!(入交建設株式会社)
明治39年に土木工事業三谷組として創業以来、100年以上に渡って構造物を提供し、地域産業や地域住民の安全・安心に貢献をしてきた入交建設株式会社。絶え間なく技術力の向上や創意工夫を続け、多くの若い人材の育成などにも積極的な同社に、断面修復工におけるHatsulyの活用方法をお伺いしました。
左から
山岡様(入交建設株式会社)
田中様(入交建設株式会社)
大﨑様(入交建設株式会社)
川北(DataLabs CS)
新技術を積極的に取り入れて「働きやすい環境を整える」
ーまずはじめに御社がどのような会社か教えてください
山岡さん:弊社は土木部と建築部がありますが、土木事業をメインに行っている会社です。土木の中では道路や橋梁の新設工事と、現在のインフラを長く維持するための補修工事や南海トラフ地震への対応としての耐震補強工事などを行っています。発注者としては国交省や高知県からの発注が多いです。
ー世代間の壁がなく働きやすいという話も伺いましたが、どのような雰囲気なのでしょうか
田中さん:人員数としては土木部全体で35人程度になりますが、その過半数が26歳以下という人員構成になっています。その中で、若いメンバーからの意見を取り入れてくれるので働きやすいなと感じます。
例えば今日のこの服もそうですが、若いメンバーから「作業中に暑いので作業しやすい作業着を作りたい」という提案があって作ったものになります。
山岡さん:このような風土に加えて、今の社長は「働きやすい環境を整える」という考えを持っていて、今回のHatsulyのような新技術についてもどんどん取り入れていこう、というスタイルです。結果として、作業時間の削減につなげることが出来れば、さらに働きやすくなる、従業員が自分の時間をとれるという考えで事業運営をしています。
断面修復工における出来形管理の省力化を期待
ー今回Hatsulyについてどういったきっかけで知っていただいたのでしょうか
山岡さん:今年度から、橋梁補修系の工事についてもBIM/CIMの利活用をするようになったこともあり、初年度でわからない部分は多くあるが、まずは取り組んでみようということになりました。
今回の工事においては、国交省様の特記仕様書に施工者希望型のBIM/CIM適用の試行工事である旨記載があったことから、BIM/CIMの利活用について支援をしてくれる会社に相談したところ、Hatsulyを紹介してもらいました。
Hatsulyについては、断面修復工の中で深さなどを手作業で測定していたところを、LiDAR付のiPad一つで完結できるということで、それは楽そうだという印象を持ちました。
ー断面修復工の流れやその中の手作業での測定とはどのようなものなのでしょうか
田中さん:腐食したコンクリートを補修する工事なのですが、コンクリートをはつった上でその寸法を計測し、その後モルタルを詰めていくという作業になります。
山岡さん:例えば、施工箇所で言えば橋げたの上部で剥落している部分にカッターを入れて、コンクリートを健全な部分まではつりだします。なお今回のR5-6年度奈半利管内橋梁補修工事では、このようなはつり箇所がなんと1,200箇所以上あります。
はつりだした後は、はつる前の基準面から一定の深さはつっているため、箱のような形状になります。従来方法の測定では、この箱形状の部分にピンポールを当て、さしがねで何点か深さを測定し、平均深さを算出していました。合わせて、二辺の長さも計測していました。
その他にも写真を撮る必要もあり、今回の現場ではこういった作業を高所作業車上で行うため、とても時間がかかることが想定されました。
また、はつった個所については鉄筋が露出しているため、長時間そのままにしていると錆びてきてしまうことがあります。特に今回の現場は潮風が来ることもあり、なるべく短時間で計測を終えてモルタルを詰めていきたいという事情もありました。当然さびている箇所については錆落としをして薬を塗る等の対応はしますが、なるべく作業時間短縮はしたいと考えていました。
このような条件を考えたときに、点群を取得し、3次元モデルを作成することで必要な数値が自動算出できるという、Hatsulyは使えると思いました。
高所作業車を使った作業の全景
従来手法による計測の様子
2名で3~5分かかる作業を、1名で数秒~30秒で実施可能に。1,200箇所の実施で3,400分以上の時間短縮を実現
ーHatsulyを使用してみていかがでしたでしょうか
田中さん:従来の測定方法では2名で1か所あたり3~5分作業にかかっていたところ、Hatsulyの場合は1名で1か所あたり数秒から長くても30秒くらいで計測することが出来ました。それが1,200箇所以上なので、かなり時間短縮につながったと感じています。
一方で、事務所に戻ってから取得したデータをもとに、3次元モデルへの変換や帳票作成の作業を行ったのですが、慣れるまでこの作業には少し時間がかかりました。
山岡さん:ここは操作の慣れの問題だったなと思っています。
田中さん:あと良かった点として、今回の現場が高所作業車での作業ということで、従来の測定方法では少し身を乗り出して測定しなければいけなかったのですが、Hatsulyでは安全な場所からiPadで撮影出来た点は良かったと思います。
iPad Proを使った計測の様子
ーデバイスとしてはiPadをご利用いただいているんですね
山岡さん:今回の現場用に、iPad Proを購入しました。ただ、iPadだけではなく、LiDAR付のiPhoneも活用しています。
3次元モデル作成や帳票作成は事務所に戻ってから行うため、iPadとiPhoneで二手に分かれて点群取得を行うことで、より時間短縮につなげることが出来ました。
従来であれば二手に分かれることはできず、2名で1か所を3~5分でやっていたところなので、かなりの時間短縮になったと感じています。
ー操作性や機能面としては問題ないでしょうか
田中さん:操作に難しいと思うところはほとんどなく、初めてでも問題なく利用することが出来ました。必要な数値(各辺の長さ、はつり深さ、体積)についても算出できるので、機能面も問題ないと感じています。
山岡さん:Hatsulyのアップデートで追加された、グリッドを活用した深さ算出機能が、とても良かったですね。とてもやりやすくなったと感じています。
グリッド機能によるはつり深さ算出のイメージ
従来手法と比較しても精度は全く問題ない
ー出来形管理図表や写真管理はどのようにされているのでしょうか
山岡さん:出来形管理図表については、このようなものを作成しています。(実際の出来形管理図表を見せていただきながら)はつり面の幅、高さ、はつり深さを記入しています。
田中さん:Hatsulyで計測した箇所については、Hatsulyから出力した帳票に必要な数値が記載されますので、そのエクセルデータの数値をコピー&ペーストしています。また、角を全面はつっているような、Hatsulyでは計測が難しい箇所も一部あったので、その部分については従来の手法にて計測を行い、転記しました。
山岡さん:写真管理については、検査箇所が1,200箇所以上あるということから、発注者様との協議にて全体の10%程度任意の箇所にて行うことになりました。この写真の数値と出来形管理図表の数値を発注者様にご確認いただく予定です。
また、この写真を残している箇所については従来の手法でさしがねを当てて計測していますが、一部同時にHatsulyでの計測も行いました。手間は増えるのですが、今後Hatsulyをさらに活用していくために発注者様に精度が問題ないことをPRする意図もあって行いました。
田中さん:実際、精度面は全く問題なかったです。
山岡さん:写真を残していない箇所についてはHatsulyのみで計測を行っています。写真は撮っていませんが、点群データと3Dモデルが残るので、写真と同じような扱いになるのではと考えています。
精度検証資料を活用して事前協議にてHatsulyの活用を発注者様に説明
ーHatsulyはまだ新しい技術ですが発注者様との事前協議はどのように進めたのでしょうか
山岡さん:別の点群測量の内容も含んだBIM/CIMを利活用するという全体提案の中に、Hatsulyも盛り込みました。この提案内容で計画書を作成して、全体の打ち合わせの際に説明をして支持をいただきました。
現在はHatsulyはNETIS登録されていますが、当時はまだ登録されていなかったのでどうなるか読めない部分もあったのですが、もう使うと決めて提案に盛り込みました。
ー説明の際に何か意見やフィードバックなどはありましたでしょうか
山岡さん:発注者様は金額が適正なのかという点について結構気にされるのですが、Hatsulyは金額的にも問題ないと判断いただきました。
また精度面については、実際に使用しないとわからないという点はあるものの、打ち合わせの中でDataLabsさんの精度検証の資料をもとに説明をすることでご納得いただきました。
橋梁補修でBIM/CIMを活用している事例がほとんどないということもあって、Hatsulyについてもフィードバックは多くはなかったです。ただ、断面修復工の作業時間の省力化というだけではなく、将来的には点群データと3Dモデルを管理図等や補修履歴などに紐づけて維持管理に活かせるといいよね、というようなことは言われておりました。
ー検査については既に行われましたか
山岡さん:検査はこれからになります。検査は、検査官がチェックリストに基づいて出来形などを確認していく流れになります。こちらとしては出来形管理図表も見せつつ、Hatsulyの画面なども見せて説明しようと思っています。この際に点群データを活用していることや、従来の手法との比較による精度の高さを伝えようと思っています。
インタビュー終了後に機能面のフィードバックをしている様子
現場次第では既に10点満点のシステム
ーHatsulyのおすすめ度としては10点満点でいうとどの程度でしょうか
田中さん:この現場でいうと検査箇所が特別に多いということもあって、Hatsulyの操作がある程度多くなるので9点というところかと思っています。機能面のアップデートなどでさらに操作が簡略化できれば、10点満点になるかと思います。
(※Hatsulyは今後のアップデートで、操作手順の更なる簡略化を予定しています)
山岡さん:ただ、もう少し検査箇所が少ない現場であれば、現時点でも10点満点といっても良いと思いますね。次の現場でもぜひ活用したいと思っています。
今回の工事現場の全景
Hatsuly
「Hatsuly」は、スマホやタブレットで取得したはつり箇所の3次元データを利用して、1人ではつり深さやモルタル量を自動算出し、帳票を作成できるアプリです。3次元データや帳票を発注者と共有することができ、オンライン上で検収を完了できます。